捨てていた医療材料が収益に?R-SUD・使用済み医療機器の回収と病院経営改善

病院の収益改善というと、診療報酬の算定や患者数の増加、病床稼働率の向上などが思い浮かびます。

また、これまで紹介してきた自動販売機や売店、床頭台などの契約も、病院に収益をもたらす仕組みの一つです。

しかし、それ以外にも、これまで廃棄していた医療材料や、使用しなくなった医療機器に価値を見いだす取り組みがあります。

その代表的な仕組みが、R-SUD(再製造単回使用医療機器)です。

今回は、R-SUDの制度と経済的なメリットに加えて、使用済み医療機器の回収や海外での再製造、不要となった医療機器の売却などについて考えてみます。

1.R-SUDとは何か

R-SUD(Remanufactured Single-Use Device)とは、使用済みのSUD(Single-Use Device:単回使用医療機器)を、承認を受けた製造販売業者が回収し、検査・分解・洗浄・必要な部品交換・再組立て・滅菌などを行い、新たな医療機器として製造販売する仕組みです。

ここで重要なのは、病院が使用済みの医療材料を洗浄して、そのまま再使用するものではないという点です。

R-SUDは、法令に基づく製造販売承認と品質管理のもとで再製造される医療機器です。

日本では2017年に制度が導入され、2020年4月には日本ストライカーが国内初のR-SUDを販売しました。

同社の製品はその後も拡大し、2026年7月には循環器領域で5製品となっています。

2.R-SUDの基本的な仕組み

病院での運用を簡単に整理すると、次のようになります。

① 病院で新品のSUDを使用する

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② 使用済みSUDを専用容器で分別・保管する

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③ SPDや中央材料部門などが院内回収を取りまとめる

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④ 再製造事業者が定められた方法で回収する

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⑤ 検査・洗浄・必要な部品交換・再組立て・滅菌などを実施する

↓

⑥ 薬事承認されたR-SUDとして販売する

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⑦ 医療機関がR-SUDを購入し、使用する

この仕組みでは、使用済み医療材料の回収から再製造、販売までが一つの流れになっています。

対象となる製品には、心臓電気生理学的検査に使用するカテーテルや心腔内超音波カテーテルなどがあります。

ただし、すべてのSUDが再製造できるわけではありません。実際に回収・再製造できる品目は、製造販売承認や事業者の回収対象によって決まります。

3.病院にとっての経済的メリットは何か

病院側の経済的なメリットは、大きく分けて二つあります。

一つは、使用済みSUDの回収協力に伴う経済的な効果です。

契約内容によっては、回収業務への対価が設定されることがあります。また、廃棄物処理費用の削減につながる可能性もあります。

ただし、回収するだけで必ず手数料収入が得られるわけではありません。

もう一つが、再製造された医療材料を新品より安価に購入できる可能性です。

例えば、新品の購入価格が10万円の材料を、再製造品では7万円で購入できれば、購入費用は3万円削減できます。

ただし、これはあくまで仮定の計算です。実際の価格差は品目や契約条件によって異なります。

また、医療材料の購入価格が下がっても、保険償還価格が変わる場合には、単純に購入価格の差額がそのまま病院の利益になるとは限りません。

診療報酬を含めた検証が必要になります。

4.令和6年度診療報酬改定で新設された使用加算

R-SUDの普及を後押しする制度として、令和6年度診療報酬改定では「再製造単回使用医療機器使用加算」が新設されました。

これは、一定の施設基準を満たす医療機関が、対象となるR-SUDを手術に使用した場合に算定できる加算です。

加算点数は、対象となる特定保険医療材料の所定点数の10%に相当します。

施設基準には、対象となるR-SUDを手術に使用した実績が5例以上あること、患者にあらかじめ文書で説明していること、原型医療機器の回収等を適切に実施していることなどが定められています。

ここで注意したいのは、材料購入価格の10%がそのまま病院の利益になる制度ではないということです。

実際の収益を考える際には、

  • 新品の購入価格
  • R-SUDの購入価格
  • それぞれの保険償還価格
  • 使用加算の算定可否と加算点数
  • 回収・保管・管理に伴う費用

を整理する必要があります。

例えば、新品と再製造品の購入価格に差があっても、償還価格の違いによって収益効果が変わります。

R-SUDを導入する場合には、購入価格の削減額だけでなく、診療報酬を含めた1症例当たりの収支差で判断したいところです。

5.回収が進んでも、再製造品を購入できるとは限らない

R-SUDの仕組みには、もう一つ実務上の課題があります。

使用済みSUDの回収に協力していても、その病院で使用する製品に対応したR-SUDが販売されているとは限りません。

回収できる品目と、国内で薬事承認され販売されている再製造品は、必ずしも一致しないからです。

また、販売されていても、医師の使用意向や製品の仕様、調達条件などによって、導入できるかどうかは変わります。

そのため、R-SUDの経済効果を試算する際には、

「回収できる数量」と「再製造品として購入・使用できる数量」を分けて考えること

が重要です。

回収手数料や廃棄費用削減だけを評価するのか、再製造品の購入によるコスト削減まで含めるのかによって、事業の評価は大きく変わります。

6.海外での再製造を目的としたSUD回収という仕組みもある

国内のR-SUD制度とは別に、使用済みSUDを回収し、海外での再製造につなげる事業スキームもあります。

海外では日本より早くSUDの再製造が事業化されており、対象製品や流通市場にも違いがあります。

こうした回収スキームでは、病院が使用済みの対象医療材料を分別・回収し、事業者へ引き渡すことで対価を得ることが想定されます。

契約条件によっては、国内のR-SUD回収協力よりも高い対価が提示されるケースも考えられます。

ただし、ここは慎重に確認する必要があります。

使用済み医療機器の海外への引き渡しは、国内のR-SUD制度に基づく回収と同じ扱いになるとは限りません。

廃棄物該当性、感染性廃棄物の取扱い、輸出入規制、海外での再製造の適法性などを確認する必要があります。

単に「海外で再製造するから買い取れる」という説明だけで判断するのではなく、事業者がどのような法的根拠と許認可のもとで回収・輸出しているのかを確認することが重要です。

7.撤去冠・義歯や不要医療機器にも価値がある

使用済み医療材料の有効活用という視点では、ほかにも検討できるものがあります。

例えば、歯科領域の撤去冠や義歯に含まれる貴金属類です。

金、銀、パラジウムなどを含む歯科材料は、適切に回収・精製することで資源としての価値が生まれる場合があります。

また、医療機器の更新時には、既存機器をメーカーが下取りすることがあります。

しかし、必ずしもメーカー下取りだけが選択肢ではありません。

中古医療機器の買取事業者や、海外への販売ルートを持つ事業者に査定を依頼する方法も考えられます。

例えば、画像診断装置や内視鏡関連機器などは、機種、年式、使用状況によって中古市場での評価が異なります。

更新時に単に廃棄費用を支払うのではなく、売却可能性を確認することで、更新費用の圧縮につながる場合があります。

ただし、病院が所有している機器なのか、リース物件なのかを確認する必要があります。また、医療機器の中古販売に伴う法令上の手続きや、患者情報の消去などにも注意が必要です。

8.「廃棄するもの」も病院経営改善の対象になる

病院の経営改善では、医薬品や診療材料の購入価格、委託費など、支出の削減に注目することが多いと思います。

しかし、使用済み医療材料や不要となった医療機器についても、見直しの余地があります。

R-SUDは、医療材料の再製造による資源の有効活用、医療廃棄物の削減、医療費の効率化が期待される取り組みです。

また、医療機器の下取りや売却、貴金属類の回収なども、病院が保有する資産や資源の価値を見直す機会になります。

もちろん、感染管理、医療安全、法令遵守が最優先であり、収益だけを目的に進めるべきものではありません。

そのうえで、これまで費用をかけて廃棄していたものに、別の価値を見いだせないか。

そのような視点も、病院経営改善において持っておきたいものです。

費用を削減するだけでなく、病院の中に眠っている資源や資産を有効活用する。

R-SUDや使用済み医療機器の回収は、その一つの可能性を示しているのではないでしょうか。
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