病院のコンビニ・売店契約、売上だけ見ていませんか?収益と患者サービスを両立する10のチェックポイント
病院における「収益を生む委託契約」の中で、大きな存在となるのがコンビニエンスストアや売店、カフェです。
患者や家族にとっては、飲料や食品だけでなく、入院生活に必要な日用品を購入できる場所でもあります。
さらに職員にとっても、昼食や夜勤時の食事、日用品の購入などに利用でき、福利厚生という側面を持っています。
そのため、コンビニや売店は単純に「病院がいくら収益を得られるか」だけでは評価できません。
一方で、経営という視点から見ると、少し意外なこともあります。
店舗そのものの売上高は大きくても、病院への売上還元率は必ずしも高くありません。条件によっては、自動販売機契約の方が病院収益へのインパクトが大きいケースもあります。
さらに、事業者側から「一定の売上が確保できなければ営業継続が難しい」と言われることもあります。
病院側が高い還元率や長い営業時間を要求しすぎれば、店舗そのものが維持できなくなる可能性もあります。
病院収益、患者サービス、職員の利便性、そして事業者の採算性。
この4つのバランスを考えなければならないのが、病院内のコンビニ・売店契約の難しいところです。
病院のコンビニは「ブランド」と「運営会社」が同じとは限らない
病院内では、ローソン、ファミリーマート、セブン‐イレブン、デイリーヤマザキ、ミニストップなど、さまざまなコンビニブランドを見かけます。
ただし、必ずしもコンビニ本部が直接店舗を運営しているとは限りません。
病院内店舗では、運営会社がフランチャイズ契約等によってコンビニブランドを使用しているケースがあります。
文教、光洋、シダックス、ワタキューセイモアなど、医療・福祉施設で売店や関連サービスを展開する事業者もあります。
したがって相見積もりや公募を行う際には、
「どのコンビニブランドを入れるか」
だけではなく、
「誰が病院内店舗を運営するのか」
という視点も重要です。
運営会社によって、病院との契約条件だけでなく、営業時間、商品構成、院内配送などの付帯サービスにも違いが出る可能性があります。
一度契約したらそのまま、になっていないか
病院のコンビニや売店は、一度設置すると大きな問題がない限り、そのまま契約更新されやすい分野だと感じます。
しかし、長期間同じ条件で契約しているのであれば、一度契約内容を確認してみる価値があります。
特に確認したいのが、次の11項目です。
① 売上歩率――「売上が大きい」だけでは病院収益は分からない
契約形態には、固定賃料方式、売上歩率方式、固定賃料+売上歩率方式などがあります。
まず確認したいのは、
「店舗の年間売上はいくらで、そのうち病院にいくら入っているのか」
です。
例えば年間売上が1億円あったとしても、病院への還元率が1%なら年間100万円です。
一方、売上5,000万円でも5%なら250万円になります。
したがって、
店舗売上高 → 病院への年間支払額 → 実質的な還元率
まで把握する必要があります。
さらに、売上歩率の対象となる「売上」の定義も重要です。
通常の商品販売だけなのか。
ATM、宅配便、チケット販売、コピーサービスなどから得られる手数料収入は対象になるのか。
契約書や仕様書で確認しておきたいポイントです。
② 水道光熱費――高騰した今こそ確認する
店舗では、照明、冷蔵・冷凍設備、電子レンジ、空調など多くの電力を使用します。
水道光熱費を事業者が負担する契約もありますが、病院側が実質的に負担している契約が残っていないか確認したいところです。
特に近年は電気料金が上昇しています。
売上歩率が高くても、店舗の電気代を病院が負担していれば、実際に病院へ残る収益は小さくなります。
そのため、
病院実質収益=賃料・売上還元額-病院が負担している関連費用
という考え方が重要です。
③ 廃棄物処理費――病院のごみに紛れていないか
コンビニや売店からは、段ボール、容器包装、生ごみなど、さまざまな廃棄物が発生します。
これらを店舗側で処理しているのか、それとも病院が契約している廃棄物処理に含まれているのか。
一度確認してみる必要があります。
病院全体の廃棄物委託費の中に店舗由来の廃棄物が含まれているのであれば、それも病院側の実質的な負担です。
④ ATM――店舗契約とは別に確認する
院内にATMが設置されている場合には、
- 設置料
- 電気代
- 通信費
- ATMに関連する収益
- 設置スペースの使用料
などの契約条件を確認しておきたいところです。
コンビニの一部設備として「当然そこにあるもの」と考えず、誰が費用を負担し、病院にどのような経済的メリットがあるのか整理します。
⑤ 営業時間――24時間営業は本当に必要か
「コンビニだから24時間営業」という考え方も、一度見直してみる必要があります。
深夜帯の利用者数はどの程度なのか。
救急外来や夜勤職員の需要はどの程度あるのか。
深夜営業を維持するために必要な人件費は、事業者の採算を悪化させていないか。
24時間営業が必要な病院も当然ありますが、すべての病院に必要とは限りません。
営業時間を短縮することで店舗を維持できるのであれば、撤退されるよりも患者・職員双方にメリットがある可能性があります。
⑥ 院内配送――店舗を「売る場所」だけにしない
病棟への商品配送、商品の取り置き、事前注文なども検討できます。
患者本人が店舗まで移動できないケースもあります。
職員も忙しい時間帯に店舗へ行くことが難しい場合があります。
院内配送などのサービスは、売上歩率には直接表れにくいものの、患者サービスや職員の福利厚生という意味では価値があります。
事業者選定時には、還元率だけでなく、このようなサービス提案も評価対象にしてよいと思います。
⑦ 入院セットとの整合性――商品が重複していないか
近年は入院セットを導入している病院も増えています。
一方で、入院セットに含まれている商品が、売店やコンビニでも販売されていることがあります。
もちろん、選択肢として販売すること自体に問題はありません。
ただし、
入院セット導入前後で売店の売上構成がどう変化したのか
は確認しておきたいところです。
入院セット、売店、床頭台などをそれぞれ別々の契約として管理するのではなく、患者が入院生活で利用するサービス全体として考える視点も必要です。
⑧ キャッシュレス決済――患者サービスとコストの両面を見る
現金を持たない患者や家族も増えており、キャッシュレス決済への対応は重要な患者サービスです。
ただし、キャッシュレス決済には決済手数料が発生します。
通常は店舗事業者側の費用として処理されると考えられますが、契約条件や売上歩率の算定にどのように反映されているのか確認しておいて損はありません。
⑨ 災害時対応――BCPの一部として考える
病院内店舗には、平時の利便性だけでなく、災害時の役割も期待できます。
例えば、
- 災害時の商品・飲料提供
- 一定量の在庫確保
- 災害時の物流協力
- 自動販売機の災害対応機能
- 営業継続・早期再開体制
などです。
病院BCPを策定しているのであれば、コンビニ・売店・自動販売機をBCPと切り離して考える必要はありません。
事業者との契約や協定の中に、災害時の対応をどこまで盛り込めるのか確認しておきたいところです。
⑩ 契約期間――「自動更新だから今年もそのまま」を避ける
3年、5年といった複数年契約に加え、自動更新条項が設定されているケースもあります。
契約時には、
- 契約期間
- 自動更新の有無
- 更新拒絶の通知期限
- 中途解約条件
- 営業時間等を変更できる条件
- 売上低下時の協議条項
- 賃料・還元率の見直し
- 価格改定
- 撤退時の原状回復
などを確認しておきたいところです。
重要なのは、契約開始時にすべてを完璧に決めることだけではありません。
環境が変わったときに契約条件を見直せる仕組みを最初から作っておくことです。
コンビニ契約も「収益」と「サービス」の両面からモニタリングする
ここまで挙げた内容は、コンビニだけでなく、売店やカフェにも共通します。
病院では、清掃、給食、設備管理など、病院からお金を支払う委託契約については比較的細かく管理しています。
一方で、コンビニ、売店、自動販売機などの病院に収益をもたらす契約は、一度契約すると見直す機会が少なくなりがちです。
しかし、収益契約も委託契約です。
契約開始時の条件設定が重要なのはもちろん、その後も、
売上高、病院への還元額、水道光熱費、営業時間、利用者数、患者・職員の満足度
などを定期的に確認する必要があります。
そして環境が変われば、契約条件も変えられるようにしておく。
高い還元率を要求するだけでも、患者サービスだけを追求するだけでもありません。
病院の収益、患者・家族の利便性、職員の福利厚生、事業者の継続可能性。
この4つのバランスを取りながら、コンビニ・売店・カフェの契約を設計していくことが重要ではないでしょうか。
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