病院の空き病棟をどう活用する?ダウンサイジング後の医療・介護以外の収益化アイデア10選
人口減少や地域医療構想を背景に、病院では病床削減やダウンサイジングを進める施設が増えている。
しかし、病床を減らした後の建物をどう活用するかまで十分に議論されているケースは少ない。
もちろん、回復期病棟や地域包括ケア病棟への転換、介護施設への転用など、医療・介護分野で活用できるのであれば、それが最も望ましい。
一方で、地方では介護需要も伸び悩み、病院の売却も容易ではない地域がある。
そのような場合には、「病院だから医療・介護用途」という発想を一度外し、民間事業として活用することも選択肢の一つになる。
今回は、医療・介護以外で考えられる病院の空き病棟・遊休スペース活用のアイデアを整理したい。
活用方法① サテライトオフィス・企業研修施設
企業の地方分散やテレワークの普及により、サテライトオフィスや研修施設として活用する方法である。
病院には会議室や駐車場などが整っている施設も多く、比較的転用しやすい。自治体の企業誘致施策と組み合わせることで実現する可能性もある。
活用方法② メディカルフィットネス・24時間ジム
地域住民向けの健康増進施設として活用する方法である。
病院ブランドを活かしたフィットネスや、高齢者向け運動施設なども考えられる。リハビリ部門との連携ができれば、病院ならではの特色も出しやすい。
活用方法③ 物流施設・配送拠点
病院は幹線道路沿いに立地していることも多く、大型車両の出入りや駐車スペースを確保しやすい。
物流会社の配送拠点やEC物流施設、災害備蓄倉庫などとして利用できる可能性もある。医療とは異なる発想だが、遊休施設活用の有力な候補となる。
活用方法④ データセンター・サーバールーム
AIやクラウドサービスの普及に伴い、データセンター需要は拡大している。
十分な電源容量や通信回線など条件は必要となるが、建物によっては活用できる可能性がある。
活用方法⑤ コワーキングスペース
起業支援施設やテレワーク拠点として整備する方法である。
自治体や地域企業との連携により活用できる可能性もある。
活用方法⑥ BPO・コールセンター・事務センター
地方では、コールセンターや企業のバックオフィス(BPO)、事務センターを誘致する自治体も増えている。
病院は広い駐車場や空調設備、十分な電源を備えている施設も多く、事務系業務との相性は決して悪くない。
また、地域の雇用創出にもつながるため、自治体や金融機関がマッチングを支援してくれる可能性もある。
活用方法⑦ トランクルーム・レンタル収納
立地条件によっては、企業や個人向け収納施設として貸し出す方法も考えられる。
建物全体だけでなく、一部スペースを活用する方法もある。
活用方法⑧ 太陽光発電・ソーラーカーポート
病棟だけではなく、屋上や広い駐車場も病院にとって重要な資産である。
PPA方式などを活用すれば、初期投資を抑えながら電気料金削減につなげることも期待できる。
活用方法⑨ 保育・教育施設
保育園や学童保育、放課後等デイサービスなど、地域ニーズに応じた施設として活用する方法である。
病院職員向け福利厚生としての役割も期待できる。
活用方法⑩ EV充電ステーション
電気自動車(EV)の普及に伴い、EV充電設備の設置も選択肢の一つとなる。
病院は広い駐車場を有していることが多く、患者や職員だけでなく地域住民にも利用してもらえる可能性がある。
補助金を活用した整備や、民間事業者による設置・運営スキームもあり、病院側の初期投資を抑えながら遊休スペースを活用できるケースもある。
民間企業に聞くという選択肢「サウンディング型市場調査」
病院だけで活用方法を考えても、発想には限界がある。
そこで有効なのが「サウンディング型市場調査」である。
これは民間企業に対し、「この建物ならどのような活用が考えられるか」をヒアリングする市場調査の手法で、自治体の遊休施設活用では広く活用されている。
調査は、コンサルティング会社や不動産会社、デベロッパーへ依頼できるほか、取引銀行や地方銀行に相談し、活用可能な企業を紹介してもらえるケースもある。
費用は簡易的な調査で数十万円程度、本格的な市場調査では数百万円程度となることが多い。
病院だけで結論を出すのではなく、「民間企業ならどのような使い方をしたいのか」という視点を取り入れることが重要である。
発想を医療・介護だけに限定しない
病院のダウンサイジングでは、病床を減らすこと自体が目的ではない。
減らした後の建物や遊休スペースをどのように活用するかまで考えて初めて経営改善につながる。
医療・介護用途で活用できるのであれば、それが最も望ましい。
しかし、それが難しい地域では、医療・介護という枠を一度外し、物流、企業、地域サービスなどさまざまな民間ニーズを取り入れることも必要になる。
病院が自ら新規事業を始めることだけが正解ではない。
「病院は事業者になる」のではなく、「病院は貸主になる」という発想も重要である。
空き病棟は「余った建物」ではない。
病院が持つ貴重な経営資源であり、新たな収益を生み出す資産でもある。
これからの病院経営では、その資産をどのように活かすかという視点が、ますます重要になるだろう。

