病院の自販機契約を見直す!売上歩率・販売本数・設置場所から考える収益改善

病院の経営改善というと、医薬品や診療材料の価格交渉、清掃・給食などの委託費削減に目が向きがちです。

しかし、忘れてはいけないのが病院に収益をもたらす契約です。

その代表例が、自動販売機の設置・運営契約です。

自動販売機は、契約条件によっては売店やコンビニエンスストアより高い売上還元率を設定でき、病院にとって無視できない収益源となります。

今回は、公開されている病院の公募資料や販売実績を参考に、自動販売機契約の収益構造、売上歩率の交渉、販売本数、事業者の選び方、設置場所の見直しについて考えてみます。

1.自販機契約には複数の収益モデルがある

病院の自動販売機契約には、大きく分けて次の3つの方式があります。

  • 固定使用料方式: 売上にかかわらず、事業者から一定額の使用料を徴収する。
  • 売上歩率方式: 自動販売機の売上に、契約で定めた還元率を掛けた金額を徴収する。
  • 固定使用料+売上連動方式: 基本使用料に加えて、売上に応じた納付金を徴収する。

固定使用料方式は、病院にとって収入の見通しが立てやすい一方、販売本数が増加しても病院収入は原則として変わりません。

売上歩率方式は、売上増加が病院収入の増加につながるため、設置場所や商品構成を事業者と一緒に改善する動機が生まれます。

固定使用料と売上連動方式を組み合わせれば、一定の収入を確保しながら、売上増加による追加収益も期待できます。

また、契約条件によっては、電気代や空容器の回収費用なども事業者負担となります。

そのため、提示された売上歩率だけで契約条件を比較してはいけません。

還元率が高くても病院が電気代を負担する契約と、還元率は多少低くても関連費用を事業者が負担する契約では、病院に残る実質収益が逆転する可能性があります。

2.売上歩率は30~50%が一つの交渉目安

公的病院の公募・入札資料を調べると、売上歩率が30~50%程度となる事例が見られます。

これは、私自身がこれまで病院の契約交渉に携わってきた経験とも重なる水準です。

ただし、全国の病院を対象とした統計的な平均値ではありません。設置台数、販売本数、商品の販売価格、立地、電気代負担などによって、事業者が提示できる歩率は異なります。

したがって、30~50%をすべての病院に当てはめるのではなく、自院の契約条件を検証するための参考レンジとして捉えるのが適切でしょう。

では、歩率が10ポイント違うと、どの程度の収益差が生まれるのでしょうか。

3.自販機10台で年間売上1,200万円。歩率10ポイントの差は120万円

公開されている病院の自動販売機販売実績を確認すると、飲料自動販売機1台当たり年間6,000~10,000本程度という数字が、一つの参考レンジとして見えてきます。

月間では約500~830本、1日平均では約16~27本です。

もちろん、これも全国平均ではありません。設置場所によっては、これを大きく上回る自動販売機もあれば、下回る自動販売機もあります。

ここで、自動販売機を10台設置している病院を想定してみます。

【年間売上の試算】

  • 設置台数:10台
  • 1台当たり年間販売本数:8,000本
  • 平均販売価格:150円

10台 × 8,000本 × 150円 = 年間売上1,200万円

この場合、病院への還元率によって、年間収益は次のように変わります。

売上歩率病院の年間収入
30%360万円
40%480万円
50%600万円

歩率が10ポイント違うだけで、年間120万円の収益差が生まれます。

5年間の契約であれば600万円です。

これは一定の販売本数と販売価格を仮定した単純計算ですが、歩率交渉の重要性を理解するには十分な数字ではないでしょうか。

ただし、交渉によって歩率を引き上げても、販売価格が上昇したり、商品の選択肢が減ったりすれば、患者サービスに悪影響が生じる可能性があります。

病院収益と患者サービスを両立させることが、契約見直しの基本です。

4.病床数だけでは販売本数を説明できない

病院の自動販売機を分析していて興味深いのは、同じ病院内でも、設置場所によって販売本数が大きく異なることです。

例えば、病院の正面玄関、外来待合、病棟のデイルーム、職員休憩室では、利用者も購入する商品も異なります。

また、病床数が同じ病院であっても、外来患者数、職員数、面会者数、院内売店の有無などによって販売機会は変わります。

したがって、病床数だけを基準に自動販売機の適正台数や売上を判断することは難しいと考えています。

自動販売機の設置場所や価格設定については、静岡大学の加藤里子氏・遠藤正之氏による「飲料自動販売機の設置場所と価格からみるマーケティングの考察」という研究もあります。

自動販売機の設置場所を分類し、価格競争や立地による価格設定の違いを分析した研究です。

また、『自販機マーケティング―21世紀のベンディングマシーン・ビジネスを求めて』という専門書も出版されています。

自動販売機は、単に商品を並べて販売する設備ではありません。

設置場所、価格、商品構成、利用者の購買行動などを組み合わせて考える、一つの販売チャネルなのです。

病院の自動販売機も、同じ視点で見直す余地があります。

5.メーカー系だけでなく、独立系やMIX機も比較する

自動販売機の契約見直しでは、売上歩率の交渉に加えて、事業者や商品構成の比較も欠かせません。

事業者は大きく分けると、メーカー・ボトラー系と独立系オペレーターに分類できます。

メーカー・ボトラー系

コカ・コーラやサントリーなどが代表例です。

基本的には自社・グループ商品を中心に取り扱い、知名度の高い商品をそろえられることが強みです。

独立系オペレーター

ユカや八洋などが代表例です。

複数メーカーの商品を取り扱うことができ、メーカーの枠にとらわれない商品構成を提案できます。

さらに、ジャパンビバレッジのような大規模な自動販売機オペレーターも比較候補となります。

MIX機(マルチブランド型)

MIX機とは、1台の自動販売機に複数メーカーの商品を組み合わせて販売する方式です。

独立系だけでなく、サントリー系などでも、複数メーカーの商品を取り扱う自動販売機が展開されています。

つまり、事業者の系列と商品の販売方式は、分けて考える必要があります。

例えば、メーカー別に6台設置している場所で、売れ筋商品を集約したMIX機を導入すれば、商品選択肢を維持しながら台数を削減できる可能性があります。

ただし、台数を減らすことで購入機会が失われたり、混雑が生じたりする可能性もあるため、販売実績を確認したうえで検討する必要があります。

6.設置場所に応じて、商品構成を変える

病院内の自動販売機は、すべて同じ商品構成にする必要はありません。

例えば、次のような使い分けが考えられます。

  • 正面玄関・外来: 患者や家族の幅広いニーズに対応するMIX機
  • 職員休憩室: 職員の福利厚生を意識した低価格機
  • 病棟: 水やお茶などを中心とした商品構成
  • 救急外来: 夜間・休日の利用を想定した商品構成

実際にさまざまな病院を訪問していると、「なぜこの場所に自動販売機が設置されているのだろう」と疑問に思うことがあります。

以前から設置されているという理由だけで、十分な検証が行われていないケースもあるのではないでしょうか。

契約更新は、歩率を見直すだけでなく、設置場所や台数、商品構成を検証する機会でもあります。

7.相見積もりでは、歩率以外に何を比較するべきか

事業者から相見積もりを取得する際には、売上歩率だけでなく、次の項目も比較したいところです。

商品・販売方法

  • メーカー専用機かMIX機か
  • 取り扱うメーカー数と商品構成
  • 病院側による商品指定の可否
  • 販売価格とキャッシュレス決済への対応

収益・運営条件

  • 売上歩率と最低保証額
  • 電気代などの費用負担
  • 台別・商品別販売本数の報告
  • 低稼働機の入れ替え・撤去提案

患者サービス・設備管理

  • 災害対応機の設置
  • 空容器の回収方法と頻度
  • 売り切れの発生状況と補充体制

特に重要なのが、台別・商品別の販売実績です。

年間売上の総額だけを把握していても、どの場所の、どの商品が売れているのか分かりません。

販売実績を定期的に報告してもらい、低稼働機の撤去や移設、商品構成の変更につなげることが大切です。

8.自販機を「設置して終わり」の契約にしない

病院は、患者、家族、職員など、多くの人が日常的に利用する施設です。

外来の待ち時間や入院生活、夜間・休日の勤務など、自動販売機が必要とされる場面は少なくありません。

一方で、病院によっては売店やコンビニエンスストア、カフェなども運営されており、院内の販売サービス全体を考慮する必要があります。

また、配茶方法の変更など、病院の運用が変われば、飲料の購入需要も変化する可能性があります。

自動販売機契約の見直しでは、単に最も高い歩率を提示した事業者を選ぶのではなく、販売本数、設置場所、商品構成、患者サービス、病院の実質収益を総合的に評価することが重要です。

病院の経営改善は、費用を削減することだけではありません。

これまで十分に検証してこなかった収益契約に目を向けることも、経営改善の一つの方法です。

今後は、自動販売機だけでなく、売店、コンビニエンスストア、床頭台、テレビ、Wi-Fi、入院セットなど、病院内の収益契約についても取り上げていきたいと思います。

「自院の契約が適正か分からない」「他院との比較をしてみたい」という方向けに、契約内容や見積書の簡易診断、病院向け講演・研修、顧問相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。

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