福利厚生費は聖域ではない
病院経営に必要な福利厚生の再設計とは
病院経営において福利厚生費は、「職員満足度向上」や「人材確保」のために必要な投資と考えられている。
しかし、その福利厚生は本当に活用されているだろうか。
実は福利厚生費は、委託費や材料費と違い、効果検証が行われないまま継続されているケースが少なくない。
大切なのは福利厚生を削減することではない。
職員にとって価値があり、病院にとっても持続可能な制度へ再設計することである。
福利厚生費は利用率が見えにくい
病院でよくあるのが、
「契約しているが誰も使っていない」
というケースだ。
福利厚生制度は導入時には大きく周知されるが、その後の利用状況が把握されていないことも多い。
例えば、
- 福利厚生代行サービス
- eラーニング
- レジャー補助
- 宿泊補助
などは、契約していること自体を職員が知らないケースもある。
ログイン率や利用率を確認したところ、利用者が全職員の数%しかいなかったという事例も珍しくない。
投資額と利用率が乖離しやすい福利厚生
特に見直し対象となりやすいのが、投資額に対して利用率が低い福利厚生である。
① 保養所・契約保養施設
最も典型的な例である。
昔は人気だった保養所も、旅行スタイルの変化や民間宿泊施設の充実により利用者が減少している。
一方で、
- 維持費
- 修繕費
- 固定資産税
- 管理費
は発生し続ける。
年間数百万円以上の費用をかけながら、利用者は一部職員に限定されているケースもある。
② 職員寮・宿舎
築年数の経過した職員寮では、
- 空室率上昇
- 修繕費増加
- 設備更新費発生
という問題が起きやすい。
現在の若手職員は民間賃貸を希望するケースも多く、病院側の投資額に対して利用率が低下している場合がある。
③ 福利厚生代行サービス
契約額に対し、
- ログイン率
- 利用率
を把握していない病院も多い。
「導入していること」が目的になっていないか確認したい。
④ 職員食堂
利用者数の減少により、
- 営業時間
- メニュー構成
- 委託費
が実態と合わなくなっているケースもある。
一部職員への偏在も問題
福利厚生制度は全職員向けに設計されていても、実際には利用者が固定化していることがある。
例えば、
- 特定部署だけが利用する制度
- 夜勤者以外利用しない制度
- 一部職員だけが使う補助制度
などである。
福利厚生費を公平な制度として維持するためには、
- 利用人数
- 利用職種
- 利用頻度
を分析することが重要だ。
福利厚生の再設計で見るべき指標
福利厚生制度を見直す際には、感覚ではなく数字で評価したい。
例えば、
- 年間投資額
- 利用率
- ログイン率
- 利用人数
- 職種別利用状況
- 採用効果
- 離職率への影響
などである。
年間500万円の制度でも利用者が10人しかいなければ、一人当たり50万円の投資となる。
逆に年間100万円でも多くの職員が利用していれば、高い効果を発揮している可能性がある。
福利厚生を守るために見直す
福利厚生は職員満足度や人材確保に欠かせない。
しかし、時代や職員構成が変化しても制度だけが残り続けることがある。
だからこそ、
- 本当に利用されているか
- 本当に必要とされているか
- 採用や定着に貢献しているか
を定期的に検証する必要がある。
福利厚生費の見直しは削減のためではない。
限られた財源を、職員が本当に必要とする制度へ振り向けるための再設計なのである。

