病院の臨床検査委託契約は「総額」で見るな|コスト削減の鍵は大量検査項目の価格交渉にある


病院の委託費の中でも、大きなウェイトを占めるものの一つが臨床検査業務委託である。

近年は、給食委託業務と同様に、大手臨床検査会社でも検体回収が非効率な地域や施設の整理を進めているという話を耳にする。物流コストや人件費の上昇を背景に、従来の価格水準を維持することが難しくなっているためだ。

2024年問題によるドライバー不足や賃金上昇、さらには中東情勢によるナフサ価格の影響は、検査試薬や容器など様々な資材価格にも波及している。そのため、病院や診療所にとって、臨床検査委託契約は今後さらに価格交渉が難しくなる可能性が高い分野と言える。

診療報酬改定のタイミングは最大の交渉機会

検査項目の保険点数は2年ごとの診療報酬改定で見直される。

そのため、契約期間を2年間としている施設も多いが、このタイミングこそ価格交渉の最大の機会となる。

保険点数が引き下げられた検査項目については、診療材料の償還価格改定と同様に、委託価格についても見直しを求めることが重要である。

「前回契約のまま更新」では、病院側だけが価格改定の影響を受けることになってしまう。

未保点項目はベンチマークが重要

臨床検査には、保険点数が設定されていない「未保点」の検査も数多く存在する。

しかも、これらが契約全体の中で大きな割合を占めていることも珍しくない。

そのため、

  • 他施設との比較
  • ベンチマーク分析
  • 過去契約との比較

を行いながら交渉することが不可欠である。

スピッツや採取容器の価格も見逃してはいけない

検査会社から提供されるスピッツや採尿カップなどの採取容器についても確認が必要だ。

以前は無償提供されるケースが多かったが、公正取引委員会の指導などを背景に、有償化されている施設も増えている。

一つひとつは少額に見えても、年間では材料費全体の約2%を占めることもあり、大規模病院では一千万円単位の支出になる可能性もある。

委託単価だけでなく、こうした周辺費用も含めて交渉する視点が重要である。

「何でも外注」は本当に正しいのか

検査項目の見直しも重要だ。

用手法など、院内の臨床検査技師や看護師が十分対応可能な検査まで外注しているケースは少なくない。

もちろん、人員配置や業務量とのバランスは必要だが、「昔から外注している」という理由だけで継続していないか、一度見直す価値はある。

QFTやT-SPOTなど高額検査は全体最適で考える

QFTやT-SPOTなど単価の高い検査は、個別では目立つものの、年間件数を考えると全体への影響は限定的な場合もある。

そのため、個別項目だけを見るのではなく、契約全体の価格バランスを考えて交渉することが重要である。

値上げを「死守すべき項目」と「許容できる項目」を区別する

交渉では、すべての項目について一律に値上げを拒むのではなく、

「絶対に守るべき項目」

「ある程度許容できる項目」

を整理しておく必要がある。

特に死守すべき項目

年間件数が非常に多い、

  • AST
  • ALT
  • 生化学検査
  • 免疫検査

などは最優先である。

大規模病院では、これらの単価が1円上昇するだけでも、年間で数千万円規模の影響となることもある。

また、

  • CBC
  • APTTなどの血算・凝固検査
  • γ-GTP
  • LDL
  • HDL

など健診や日常診療で大量に実施される項目も注意が必要である。

さらに、

  • 腫瘍マーカー
  • 感染症スクリーニング

についても件数を踏まえて重点的に交渉したい。

一方で、ある程度許容できる項目

比較的件数が少ない、

  • 特殊ホルモン検査
  • 遺伝子検査
  • アレルギー検査
  • 自己免疫関連検査
  • 外注会社がさらに外注している希少検査
  • 件数が定まらない新規検査

などについては、全体バランスを考えた価格設定も必要となる。

見積書は「数字遊び」になりやすい

病院側は見積総額に目を向けがちだ。

しかし、実際のコストを左右するのは、年間で何十万件も実施される大量検査項目の単価である。

次々と高額医薬品が登場する医薬品価格交渉とは異なり、臨床検査委託では「件数の多い検査をいかに抑えるか」が最大のポイントとなる。

そのためには、「抑えるべきコストを徹底して抑える」という姿勢が必要だ。

時には、そのポイントが改善されるまで安易に妥結しない覚悟も求められる。

臨床検査委託契約は、総額だけを見るのではなく、「どの項目が病院経営に最も影響するのか」を見極めて交渉することが、真のコスト改善につながるのである。

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