病院の診療費減免制度は見直すべきか?
持続可能な福利厚生制度を考える
病院の福利厚生制度の中でも、職員やその家族を対象とした診療費減免制度は長年続いている制度の一つだ。
職員本人の自己負担額を補助したり、家族の診療費を一部減免したりすることで、職員満足度向上や人材確保を目的として導入されてきた。
しかし近年、医療を取り巻く環境は大きく変化している。
高額薬剤の増加、人件費の高騰、物価上昇などにより、病院経営は厳しさを増している。
こうした中で重要なのは、「制度を廃止すること」ではなく、「制度を持続可能な形に見直すこと」ではないだろうか。
診療費減免制度は福利厚生として定着している
職員診療費減免制度は、多くの病院で何らかの形で導入されている。
職員本人だけでなく、
- 配偶者
- 子ども
- 親
まで対象としている病院もある。
また、
- 人間ドック補助
- インフルエンザ予防接種補助
- がん検診補助
なども広い意味では同様の福利厚生制度といえる。
職員採用の際のアピールポイントとして活用している病院も少なくない。
制度が一部の職員に偏っていないか
一方で、制度開始から長い年月が経過すると、本来の目的から外れてしまうこともある。
例えば、
- 自院の近隣に住む職員だけが利用している
- 慢性疾患で定期受診する職員に利用が集中している
- 家族対象が広く、利用者が固定化している
といったケースだ。
制度自体は全職員向けであっても、実際には一部の職員だけが恩恵を受けている場合もある。
福利厚生として公平性が保たれているかは定期的に検証する必要があるだろう。
高額薬剤時代に制度設計は変わる
制度が作られた当時と比べると、現在は高額薬剤や高額治療が増えている。
そのため、
- 特定の高額薬剤だけで多額の補助が発生する
- 一部利用者に費用が集中する
といった問題も起こり得る。
以前は問題にならなかった制度でも、医療環境の変化によって想定以上のコストが発生している可能性がある。
「あること」が目的になっていないか
診療費減免制度は、一度導入すると見直しが難しい。
そのため、
「昔からあるから続けている」
という状態になりやすい。
しかし、本来は
- 人材確保
- 職員定着
- 福利厚生充実
という目的があるはずだ。
制度がその目的に貢献しているかどうかを確認することが重要である。
持続可能な制度へ見直すための視点
制度を見直す際に重要なのは、単純な削減ではない。
例えば、
- 利用実績の分析
- 対象範囲の見直し
- 年間補助上限の設定
- 高額治療への対応整理
- 家族対象範囲の見直し
などである。
また、
- 利用者数
- 利用金額
- 職種別利用状況
を定期的に分析することも必要だ。
福利厚生制度は職員満足度に直結するため、感情論で議論されやすい。
だからこそ、数字に基づいた検証が重要になる。
制度を守るために見直す
診療費減免制度は病院ならではの魅力的な福利厚生制度である。
しかし、制度を一度作ったら終わりではない。
医療環境や職員構成は変化していく。
制度を維持するためには、定期的な見直しが欠かせない。
大切なのは「削減すること」ではない。
職員にとって価値があり、病院にとっても持続可能な制度として再設計していくことではないだろうか。


