電子カルテ更新=システム更新ではない
病院業務を見直す最大の機会
電子カルテの更新というと、多くの病院では「システムの入れ替え」と考えられがちだ。
しかし、本来の電子カルテ更新は単なるシステム更新ではない。
病院全体の業務を見直し、将来のコスト構造を変える絶好の機会である。
私はさまざまな病院のコスト改善に関わってきたが、電子カルテ更新時ほど無駄な投資が発生しやすく、また改善効果が大きいタイミングはないと感じている。
部門システムが増殖していないか
病院では長年の運用の中で、さまざまな部門システムが導入される。
例えば、
- リハビリシステム
- 栄養管理システム
- 手術部門システム
- 内視鏡システム
- 感染管理システム
- 褥瘡管理システム
- 文書管理システム
などである。
導入当時は必要だったとしても、現在の電子カルテには標準機能として搭載されているものも少なくない。
しかし、「昔から使っている」「現場が慣れている」という理由だけで継続されているケースが多い。
更新時こそ、
「本当に必要なシステムか」
をゼロベースで見直すべきである。
二重投資が発生していないか
電子カルテ更新の数年前に部門システムを導入するケースもある。
しかし、その場合には注意が必要だ。
例えばリハビリシステムを先に導入した場合、
- 現行電子カルテとの接続費用
- 新電子カルテとの接続費用
が発生する。
つまり接続費用を二度支払うことになる。
システム本体価格よりも、こうしたインターフェース費用や接続テスト費用が高額になることも少なくない。
電子カルテ、PACS、検査システム、ネットワーク更改などは個別に考えるのではなく、5~10
年の投資計画の中で整理することが重要だ。
医療機器の投資計画と同じ。
一年ずつずらして重複しないように、将来の更新を見越して計画をする必要がある。
その院内調整に苦しんでいる病院が多い。
「既存資産を活かせます」に注意
ベンダーからよく聞く言葉がある。
「既存資産を活かせます」
一見すると良い提案に聞こえる。
しかし実際には、そのメーカーのシステムに囲い込まれるケースも多い。
例えば、
- 電子カルテ
- ナースコール
- 中央監視設備
- 検査システム
などは一部を先に更新すると、後続の更新時に同じメーカーを選ばざるを得なくなることがある。
価格競争が働かなくなり、結果的に高額な更新費用を支払うことになる。
病院設備で本当に怖いのは価格ではなく「囲い込み」なのである。
カスタマイズは将来の負債になる
病院ごとの独自運用に合わせてカスタマイズを繰り返すケースも多い。
しかし、そのカスタマイズは次回更新時の負債になる。
更新のたびに、
- 再構築
- 再設定
- 再テスト
が必要になるためである。
電子カルテ更新を機に業務そのものを標準化した方が、長期的にはコストも運用負荷も大幅に下がる。
電子カルテ更新は病院改革の機会
電子カルテ更新を単なるシステム更新と捉えると、
「今の運用をそのまま再現する」
という発想になりやすい。
しかし、本来は違う。
- 不要な部門システムの整理
- 業務フローの見直し
- グループ病院間の標準化
- 将来を見据えた投資計画の策定
を行う絶好の機会である。
電子カルテ更新は数億円規模の投資になることも珍しくない。
だからこそ、システムの入れ替えではなく、病院経営を見直すプロジェクトとして取り組むべきだろう。
「電子カルテ更新=システム更新ではない」
病院業務を見直す最大の機会なのである。

