設備投資計画の策定
病院において、設備投資は病院が発展するためにも必要だし、当然のことながら判断を見誤ると、経営に長きに渡って悪影響を及ぼすことになる。
機器は当然、減価償却費として計算されるので、P/Lにずっと償却が終わるまで計上される。新病院で多くの機器を一度に導入して、減価償却費が経営を圧迫して黒字化できない病院を多く見てきた。また、コロナの補助金が入った時に機器を購入して、ポストコロナで減価償却費に悩む医療機関も少なくない。
重要なのは、中長期での設備投資計画をきちんと立てているかどうかだ。ただですら、現場の各部門からは新しい機器の要望が上がるが、そのときこそ、病院として確固たる設備投資計画が必要だ。
そしてポイントは設備投資が年単位で「上手に分散」しているかということをあるベテランの先生から教えてもらった。
なるほど、その通りである。
一度に機器の更新が集中すると、資金調達が大変なだけでなく、減価償却費も重くのしかかる。まして医療機器の耐用年数など10年前後が多く、上手に計画しなければ当然、同じ年に重なってしまう。
先の新病院の例では、新病院だからと新しい機器の更新を一度に行ってしまいがちだが、今後のことを考慮して、ものによっては移設を使って中長期で更新が重ならないよう配慮すべきだ。
ひとつひとつの機器選定には、病院のビジョンや戦略、アクションプランに合ったものであるかが言うまでもなく大切だ。医師招聘のために、ということもあるがいっときの投資であってはならない。また、採算性を表すための指標には以下のようなものがある。
投資利益法:設備投資に対する収益性を分析
投資利益率🟰利益➗設備投資額✖️100
数字が高いほど利益率が高いことになる
回収期間法:どれだけの期間で設備投資を回収できるか
回収期間🟰設備投資額➗各期の平均キャッシュフロー
短いほどリスクの少ない投資となる
正味現在価値法:各期のキャッシュフローを現在の価値に置きかえる方法
正味現在価値🟰キャッシュフローの現在価値➖設備投資額
プラスの値であれば費用対効果が大きい
※キャッシュフローの現在価値キャッシュフロー➗1➗(1➕資本コスト)年数
年数は一年目なら1、二年目なら2、三年目なら3をかける。1〜3年の式の総和が3年目の現在価値。
このような複数の検証方法で検討されている医療機関がどれほどあるだろうか。あまり多くないように思われる。
また、その検討を密室でなく第三者も含めた検討となっているかがまた重要だ。
各病院では機器選定委員会、なるものがあってそこで検討されています!ということになるが、その委員会での討議内容は病院により大きく異なるし、クオリティも異なるだろう。
機能しないならば法人本部の委員会とダブルチェックするようなシステムがあってもよい。
無駄な投資をしてからでは、取り返しがつかない。
そして、意外に忘れられがちなのが、周囲の医療機関の納入状況だ。競合病院とモダリティが重なってはレッドオーシャンとなり患者確保は当然見込めない。先生が患者を連れてくるから、と独りよがりの機器導入となってしまっていることがよくあるので驚く。
第三者だとそれに気づくのだが、当事者になると機器購入を止めるわけにいかないという心理が働き、十分な検討ができずに進んでしまうという例を見てきた。
どこの病院にどのモダリティが入っているかわからない、なんて声も聞くが実は、「月刊新医療」に多くのモダリティにおいて、赤裸々に掲載されている。
以上のように機器選定のプロセスは結構難しい。ここに医師や放射線技師、事務に大学医局などの意向が入るので人間関係がややこしくする。法人本部がプロセスに入り、ややこしくなることもあればうまく機能することもあるだろう。お手本のような選定ができている病院がどれだけあるか、、、
民間や他業種との経営の違いはここに垣間見えるかもしれない。