病院の医事委託契約を見直す方法|見積書・仕様書・人員配置・KPI管理のポイント
病院の委託契約の中でも、価格交渉と品質確保の両立が最も難しいものの一つが医事委託契約ではないだろうか。
医事課では日々、査定率や算定漏れの改善に取り組んでいる。しかし、委託という契約形態である以上、病院側の指揮命令には限界があり、仕様書に定められていない業務を依頼することも難しい。そのため、思うように改善が進まず、悩んでいる医事課長も多いだろう。
医事委託がよいのか、自前職員による運営がよいのかは意見が分かれるところである。しかし、医事課の質という観点では、可能であれば自院職員による体制が望ましいと考えている。
診療科ごとに算定ルールは大きく異なり、頻繁に担当者が入れ替わる環境では知識の蓄積が難しい。また、委託職員への教育方法にも限界があり、責任者の力量によって病院全体の医事課の能力が大きく左右される。
まず見直すべきは「委託範囲」
医事委託と一言で言っても、
- 外来のみ
- 入院・外来両方
- カウンター受付のみ
- 会計業務を含む
- レセプト業務まで含む
など、契約範囲は病院によって大きく異なる。
そのため、単純な委託費の比較は意味を持たない。
まずは「何を委託しているのか」を整理することが重要である。
さらに、仕様書に記載されていない業務を実施しているケースや、逆に仕様書に記載されているにもかかわらず十分履行されていないケースも少なくない。
委託契約では、「仕様書どおりに実施されているか」を定期的に確認する必要がある。
人工と見積書は必ずブレイクダウンさせる
医事委託費は人工によって大きく変わる。
そのため、本当に必要な配置人数になっているのかを確認しなければならない。
また、見積書は可能な限りブレイクダウンした形で提出してもらうべきである。
内訳が不明な見積書では、
- 人員構成
- 管理費
- 利益
- 将来の変更点
が分からず、翌年以降の比較も困難になる。
後から振り返って、「どのような体制を前提とした見積だったのか」が分からない契約は避けたい。
募集時給を見ると適正価格が見えてくる
委託業者名と病院名でインターネット検索をすると、自院で募集している求人情報が見つかることがある。
そこには募集時給が掲載されている場合が多い。
一方、見積書から一人当たりの単価を算出すると、委託会社の管理費や利益のおおよその水準を推測できる。
もちろん、社会保険料や教育費、管理費などが必要になるため単純比較はできないが、募集時給と見積単価の乖離が極端に大きい場合には、その妥当性を確認する価値がある。
また、値上げ要請を受けた場合には、
- 地域の最低賃金上昇率
- 近隣病院の募集時給
- 人材市場の状況
などと比較し、適切な水準か判断したい。
人員配置は時間帯で最適化できないか
配置人数については、単に総人数を見るだけでは不十分である。
外来患者数が集中する時間帯だけ増員し、それ以外は効率的な配置とするなど、時間帯別の運用改善が可能な場合もある。
常駐人数が本当に必要なのかも含めて検証すべきだ。
KPIを仕様書に盛り込むという考え方
SPD契約でも触れたが、価格だけでなく成果で評価する契約へ転換することも有効である。
例えば、
- 査定率
- 算定漏れ件数
- 外来待ち時間
- 未収金率
などをKPIとして仕様書に盛り込めば、病院と委託会社が同じ目標を共有しやすくなる。
価格だけを比較するよりも、質を含めた評価が可能になる。
制服代やPHS費用などの甲乙負担も見直す
委託契約では、人件費以外にも、
- 制服代
- クリーニング代
- PHS費用
- 備品費
などの費用が発生する。
これらを病院側が負担するのか、委託会社側が負担するのかを整理することで、契約全体のコストを最適化できる場合がある。
DX導入後も人員配置は見直されているか
近年では、
- 自動精算機
- 医療費後払いサービス
- 未収金保証サービス
などの導入によって、従来アナログであった会計業務は大きく効率化されている。
しかし、新たなシステムを導入しても、医事委託の配置人数が従来のままであれば、その効果は十分に発揮されない。
DX導入時には、委託契約も合わせて見直す必要がある。
ベンチマークは「委託費」ではなく「中身」を比較する
病院間比較では、
- 一人当たり外来患者数
- 一人当たり入院患者数
- 診療報酬額1億円当たりの医事委託費
などの指標も参考になる。
しかし、委託範囲が病院ごとに異なる以上、単純比較には限界がある。
最も正確なのは、ブレイクダウンされた見積書同士を比較することだ。
交渉経験は意外と少ない
医事委託契約の交渉担当は、多くの場合医事課長である。
しかし、日々委託職員を管理していても、委託会社との本格的な契約交渉は、長い職業人生でも数回しか経験しないことが多い。
一方、委託会社は契約交渉の専門家であり、多くの事例やノウハウを持っている。
だからこそ、感覚ではなく、仕様書・人工・ブレイクダウン見積・KPI・市場価格などを整理した上で交渉に臨むことが重要である。
医事委託契約は、一度締結すると長期間続くことが多い。ぜひ一度、自院の契約内容を点検してみていただきたい。
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