病院の医薬品共同購入の実態|WAM調査で見えた「単独交渉60%」の衝撃
病院経営において、医薬品・診療材料の価格交渉は年々難易度が上がっている。
未妥結減算への対応により、9月までの妥結を求められる一方で、実際には妥結後も新規採用品目の交渉は続く。さらに近年は毎年薬価改定が行われており、価格改定対応そのものが恒常業務となっている。
診療材料についても、2年ごとの償還価格改定のたびにSPD業者や代理店との交渉が必要になる。
こうした状況のなか、独立行政法人 WAM(福祉医療機構) のレポートでは、全国の病院における共同購入やSPD導入の実態が紹介されている。
この調査で特に印象的なのは、医薬品価格交渉を単独病院で実施している病院が約60%存在するという点だ。
共同購入はまだ「全国標準」ではない
WAMレポートでは、医薬品の共同購入について、
- 病院グループ内での共同購入
- 地域ネットワーク型の共同購入
- その他連携組織での共同購入
などの形態が紹介されている。
一方で、実態としては単独交渉を行っている病院も依然として多い。
これは裏を返せば、多くの病院で、
- 値引き交渉
- ベンチマーク収集
- 妥結管理
- 新規採用品対応
- 薬価改定対応
を各施設単位で行っているということでもある。
30病院規模のグループで考えても、毎月の価格交渉、採用品管理、未妥結対応を各病院が個別に行うことは、極めて大きな事務負担となる。
医薬品標準化・フォーミュラリーの重要性
共同購入を進めるうえで避けて通れないのが「標準化」だ。
WAMレポートでも、医薬品標準化を実施している割合が紹介されているが、現場感覚としても、共同購入の成否はここにかかっている。
例えば、
- 同効薬が施設ごとにバラバラ
- 採用品目数が過剰
- 医師ごとの採用慣習が固定化
- 後発品への切替ルールが統一されていない
という状態では、価格交渉力は高まらない。
逆に、
- フォーミュラリー整備
- 同効薬集約
- ベンチマーク比較
- 採用品目削減
ができれば、価格交渉の土台そのものが変わる。
特に地域医療連携推進法人では、「共同購入」が目的として掲げられることが多い。
しかし実際には、
- 医師間調整
- 採用ルール統一
- 物流統合
- ベンダー調整
- データ整備
などのハードルが高く、着手できている法人はまだ限定的と感じる。
SPD導入は進むが「万能」ではない
WAMレポートではSPD導入割合についても触れられている。
SPDは、
- 在庫管理
- 発注管理
- 物流効率化
- 購買データ可視化
などに一定の効果がある。
一方で、SPDを導入しただけでコストが下がるわけではない。
実際には、
- SPD業者任せで価格交渉が弱い
- 契約条件がブラックボックス化
- 償還価格改定時の対応が不十分
- ベンチマーク比較がされていない
というケースも少なくない。
つまり、SPDは「仕組み」であり、運用とガバナンスが伴わなければ成果は出ない。
単独交渉には限界がある
もちろん、単独病院でも優秀な担当者が成果を出すことはある。
しかし現実問題として、
- 毎年薬価改定
- 未妥結減算対応
- 新規採用品対応
- ベンダー交渉
- データ分析
- 価格妥結管理
を高いクオリティで各現場が継続するのは容易ではない。
「何人事務職員が必要なのか」という話にもなってくる。
さらに、病院によって交渉スキルに差が出れば、グループ内で価格差が発生し、“一物二価”状態になる。
だからこそ今後は、
- グループ共同購入
- 地域連携
- フォーミュラリー
- データ標準化
- ベンチマーク共有
を進めていく必要がある。
共同購入は単なる値引き施策ではない。
「病院経営の事務負担をどう減らすか」という視点でも、極めて重要なテーマになっている。
まとめ
WAMレポートからは、
- 単独交渉病院の多さ
- 共同購入の難しさ
- 標準化の重要性
- SPD活用の課題
が見えてくる。
今後の病院経営では、「価格交渉を頑張る」だけでは限界がある。
個別最適から、グループ・地域最適へ。
フォーミュラリーや共同購入を含めた“仕組み化”が、ますます重要になるだろう。

