ABC分析の重要性

コスト削減の必要性

病院は労働集約産業であるとよく言われるが、私は労働集約産業であり、物品集約産業でもあると言っている。今、これが物価高騰や為替、輸送費の関係で軒並み値上がりとなっており、これらの経営への打撃が大きい。

医薬品や医療機器、診療材料に消耗品、ありとあらゆるものの仕入が生じている。当然、コスト削減のためにはこの仕入価格を交渉することが必要になる。また、日本全国の病院はDPC病院が多いので、この疾患にはこの点数と定められているため、良い経営を行うためには当然、材料の仕入価格を落とす必要がある。

ABC分析

こう言った交渉の現状分析を行う際に、私が一番重要だと考えているのが「ABC分析」である。もともと、在庫管理の原材料や資金の資金的優先度を測る指標だが、「パレートの法則」(上位20%の商品が売上の80%を占める)と同じ考え方とされる。Aグループが売上上位70%を占めるもので構成され、Bグループが売上上位80〜90%で占めるもので構成され、Cグループが残りを占めるもので構成されるものと捉える。AグループとBグループを重視することから重点分析とも呼ばれる。

病院の交渉担当としては、こう言った交渉に携わることになった際に、諸先輩方から教わるのがせいぜいで、きちんと体系化されて教わったり、講義やテキストのレクチャーがあったりということはまずない。自分で身につけながら、というのがどの病院グループでも定石となってしまっているようである。普通の企業ではどうだろうか?

医療界では医薬品や診療材料には、「同種同効品」と呼ばれる、似て非なる薬や材料がたくさんある。販売元(メーカー)こそ異なるが、同じ商品であることさえもある。それによって医師がどれを選ぶか、病院がどれを選ぶか、地域がどれを選ぶかが変わる。経営面の見直しを行う際に、価格交渉も必要だが、ときに医薬品を替えたり構成を変更することも必要になる。

交渉はAグループに全集中!

話を元に戻せば、例えば医薬品、診療材料について交渉しようとするとき、金額構成のAグループの交渉に力を入れれば、効果が大きいことになる。医薬品の場合は新薬創出加算が付いているなどAグループの交渉は当然難しくなるが、交渉のエネルギーはAグループに全集中!本来はすべきである。Cグループを重視する考えは「ロングテール戦略」とグラフにした際の尾が長い様子から呼ばれるが、この交渉の場面では細部を頑張って交渉しても病院全体の経営に与える影響は大きくない。

ABC分析の重要性

この考え方は、医薬品のみならず新しいターゲットを交渉しようとするときにも使える重要なら方法だ。どんな構成であるかを見る際に、Aグループが何であるのか、どのようなものであるのかをよく知ることでほぼ全体を捉えた、と言っても過言でない。多くの病院から集まった購入データである場合、Aグループの商品は多くの病院に採用されているものである証であるから、その重要性は極めて高い。Aグループのメーカーから、その製品や市場についての情報を集めることはもちろん重要であり、そのメーカーを交渉できれば、極論、無理に他のメーカーにスイッチする必要もないことがわかる。病院での採用品を変えることは、委員会を通したりレジメンを変更したり、非常に労力のかかることである。今までの採用品を変えることなく交渉の成果を出す、ということは極めて重要なテクニックだと私は考えている。わざわざ大変なことをする必要はなく、その労力があるくらいならば、他のカテゴリーの交渉に時間を充てたほうがよい。Aグループには丁寧に取り組むが、Cグループにはある程度割り切って取り組むのが、効率的に進める術である。

そのように価格交渉の現状分析の手段としてでのみならず、効率的にコストダウンを図る意味でもABC分析は重要だと考えているし、日常の業務でその考え方を用いる機会はとても多い。

加重平均

このABC分析を行うにあたり付随して必要になるのが「加重平均」の方法だ。

私も最初は名前だけ教わり、やり方すら知らなかったので、その先輩を「加重平均の師」と思いながらも、しっかりと教えてくれと思ったものだ。その加重平均のやり方については、私も経験のなかで工夫をしていった。また別の投稿に譲りたい。

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