縫合糸の統一

今期、大きな削減の効果を出すことができたものとして縫合糸の統一が挙げられる。

この市場は、たいていは、いずれか2社が有力な寡占市場となっており、1社が非常に強力だ。キングメーカーは、抗菌糸の特許を取っており、学会へのセールス活動を行い診療報酬の点数がつくのを目指すとの触れ込みだ。この活動は数年前からしてあるので、近々認められるだろうとの算段らしい。

もともと強気な価格設定なのだが、値上げもあってかなりの高コストとなることが想定された。

医師たちも研修医のころからこのメーカーの糸で慣れてきたので、切替には一定の抵抗があることを想定していた。されど、もう一社も全国的にはシェアがあり、集約によってよい価格が得られるとのことで統一に取り組んだ。

説明会やサンプルを行い、反発もヒアリングを行っていきながら意見を聞いた。今回の商材は商材だけに、時間を掛けて丁寧に取り組んだ。トップダウンではあるのだが、切替が不可である糸の種類もあろうということを想定して取り組んだ。しかし、結果はトップダウンかつ、いくつかの病院で同時期にまとめて取り組んだことにより、歩調を合わせて取り組むことができた。

途中、やはり反発はあった。

「糸に拘らない医師がどこにいるんだ?」との発言もあった。しかし、実際には他社の糸をサンプル利用してもらい、一定の評価は得られたと思われる。もちろん、ガバナンスの力や、現在の病院が置かれた環境が後押ししてくれた背景があることは間違いない。

結果としては、全ての対象病院で、糸の切替が行われ、どうしても切替ができなかった種類はごく一部で、想定よりも少なかった。そして切替後、半年近くが経過するも、切替による悪影響は現在のところ出てきていない。

むしろ、シェアを奪われたメーカーが途中から完全に態度を豹変して、軟化どころか手のひら返しの提案となったのは、印象的だった。

どんどん進む切替をストップさせようと、慌てて価格を下げたが、時すでに遅し、切替先の価格に及ばないものであった。

そう言えば、キングメーカー社の抗菌糸への評価は高く、加算が着いたら損得が逆転するのではないか、という意見もあった。

こういう切替の話にはつきものだが、変えるときにもしかしたら、こうなるかもしれない、との懸念は、想像は簡単だが、想像しても仕方がない。そう割り切らなければならない。

起きもしないことを想定して、高いものを継続することほど意味のないことはない。起きたときに、修正すれば良いと一貫した姿勢を貫くべきだ。

成功には切替先の会社による現場での丁寧なフォローがあったことももちろん記載しなければならない。それなしには、達成できなかった。

今後はキングメーカーの巻き返し提案を期待するのか、今回の切替先メーカーの拡販営業に乗るのか。まだストーリーは続く。

今回もいろいろなことを示唆してくれた取り組みだったが、こういった取り組みを進めることにより組織は強くなって行っているのは感じている。

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