在宅酸素の共同購入
かつて、在宅酸素の共同購入に取り組んで、それほど難しいものをよく取り組んで…と驚かれた記憶がある。
在宅酸素は病院が帝人、フクダライフテック、フィリップス、エアウォーターなどの会社から納入を行う。圧倒的に帝人のシェアが高く、呼吸器の先生にも馴染みのメーカーだ。
医療業界を取り巻く産業は、いくつかの会社で寡占状態となっており、なかなか十分に競争が働かない環境もありがちで、公定価格だからと言って高値で納入がされることとなっていた要素がある。
特に、国立や自治体病院では顕著だ。実際に、民間病院と公的病院ではメーカーの中で異なる価格設定がされている。
在宅酸素は酸素濃縮装置加算4,000点、酸素ボンベ加算800点、呼吸同調式デマンドバルブ加算281点に対して、帝人では35,000円〜50,000円と強気な価格設定になっているのに対して、共同購入を行い、スケールメリットを活用して推奨事業者を決めることで20,000円前半、現在こそ値上がりして20,000円半ばとすることができた。在宅酸素の業者間の価格差は非常に大きく、削減効果が得られた。
しかし、機器の性能には大きな違いがなく、レポートなども同じように出るものの、一番は患者さんが長年使っているものを変える、と言う点が難しい。呼吸器の医師の承諾が得られてもだ。
切り替えるにあたっても、帝人のモデルチェンジのときももちろん大変だが、一度病院に在宅酸素HOTを持参をいただき、使い方をレクチャーのうえ他社に交換を行うので、ひと骨折れる。
よって、新規で在宅酸素を導入する患者さんから推奨事業者のHOTを使うことにした。これにより、切替は進んで行った。長年の年月が経つにつれ、利用する患者さんも増え、帝人からの切替という事例も増えていった。寡占状態にある中で、このように動きを見せなければ変わらなかった価格であろう。
交換時には看護師による説明の手間があったり、発注書を帝人のものと推奨事業者のものと2枚用意する必要があったりと新たな動きは生じる。
しかし、価格差が病院によっては帝人の半額ほどになるケースもあり、切替が進んだ取組のひとつだ。
共同購入をいろいろ進めて行く中で初期に取り組んだ、というのも院内の合意形成をする機会になり、良いきっかけとなった。他の商材になっても同様に調整してゆくだけだ。切替の文化を創出するという意味でも役割を果たしたのが在宅酸素であった。
途中、値上げの機会などはあったものの、取り組みを初めてから10年以上が経過するが、大きな問題は起きていない。
ひとつひとつの取組が重要かなと思う。