高級品採用

これだけ費用が増え、全国でも7割近くが赤字と厳しい状況だ。さらにその赤字額も目が飛び出るほど大きな額だ。

日本病院会の調査によれば、収入は前年比で増えているものの、それ以上に物価高、輸送費上昇から費用が増加しているために経営が苦しくなっている。私が観測する病院も同様だ。

労働集約型産業であるうえ、資本集約型産業であるのが病院の経営だ。給与費はベースアップで上昇し、モノについては値上がりしていないものを探すのが大変なくらいだ。

値上げを公定価格ゆえに診療報酬に転嫁できない病院は、経営改善に行き詰まっている状態だ。民間病院も含めて赤字となっており、整形や美容など分野を特化した病院でなければ黒字達成は難しいような状況だ。

病院は費用項目の見直しに入ることになるが、これを直したからと言って黒字化するような大きい話はない。しかし、費用について見直しをするべき点はいくつかある。

以前話した清掃委託の範囲や工数が過剰であることもそのひとつだが、別のことを挙げるなら医薬品ではバイオシミラーの切替が十分に進まないことを挙げる。

バイオシミラーが出ている先発品は、ほとんどが高額薬剤だ。この薬剤が7割の薬価となるバイオシミラーとなれば、医薬品費の削減効果は大きい。しかし、適応の違いもあって進まないのだが、工夫する病院は先発品と併用してうまく管理している。適応が違う、で諦めていないかが重要になる。

後発品においても、AGと呼ばれるオーソライズドジェネリックの採用率が高い病院がとても多い。AGとは先発品のお墨付きを得て、原薬、添加物、製法などが先発品と同じであることを示すが、AGでない同種同効の後発品より高価であることが多い。

後発品の供給不足が問題になっているが、AGだから供給が安定しているかといえばそうではない。

昨年10月から長期収載品の選定療養が始まり、患者が先発品か後発品かを選ぶようになったが、AGを指定することはない。

よってわざわざ高いAGを院内採用とするべきなのか考え直すべきだ。

医療機器についても、フィリップスやシーメンス、GEといった外資モダリティの採用率が高い施設は、イニシャルの価格高騰に加えて保守費用の上昇が甚だしい。海外製はどうしても物価高、輸送費が高くなる。

いわゆる、高級品のように映る資本の採用をしていて、打撃となっている病院も多い。

いや、安いものは所詮、安かろう悪かろう、でかえって費用がかかる、という指摘もあるが、供給がなされない後発品を偶然選べば、ほらみたことか!となるが、それは結果論であって、高級品ですらそれは起こり得る、というのが真実だ。

今こそ、色眼鏡を掛けず真摯に物事を見るべきだ。

今こそ、何でもかんでも新規の、新型の、高級なモノを入れようとしていないか見直すべきだ。

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