適切な看護師数の把握

病院の経営が物価高騰、輸送費高騰の影響を受けるなかでも、やはり構造的に問題となるのは人件費率。労働集約産業であるために、人件費の占める割合がとても他業種より多いことは前に述べた。

中でも最大の勢力は看護部。

国の基準では、直近の1年間の平均入院患者数に対し、7:1、10:1の配置となっているので基準以上であれば何の文句も言われないが、多すぎると経営を当然苦しめる。

地方はもともと人件費が高くなければ集まらない要素もある上、現在、物価高騰と同時に、そもそも医療従事者を採用することがどの職種も難しい。特に看護師は、奨学金制度や、看護師紹介派遣会社にお金を支払う、就職フェアに出展する、看護学校を作る、地元の学校への挨拶回りなど様々な手を使って確保しようとしている。

そのなかで、看護師数を適切な数にしなければならないので難しい話ではあるが、失敗すると経営には直結する。

様式9の必要看護師数に対してどれだけ余剰があるかを私たちは充足率として示しているが、病院によって大きく異なる。充足率が高い病院は当然経営は芳しくない。

また充足率を年間の推移で見ると、4・5月の充足率は高く、年度末に向けて下降線を辿る。確保した看護師が離職によって辞めていくためだ。しかし、地方の病院では離職が少なく、充足率は年間を通じて、一定であったりしてまたこの点も留意が必要。

そして何と言っても、充足率がダブつきやすいのはICUやHCUなどのユニット系だ。常時2:1となっており、部門に看護師配属となると夜間はともかく日中の充足率はダブつき、300%ということになりかねない。患者数に応じて一般病棟への効率的な応援体制を敷けることが理想だ。

と、この充足率が日本全国、多職種で共通言語であれば良いのだが、残念ながら共通言語に程遠い。夜勤可能看護師が少ないから、と高い充足率で回すことになる病院もたくさん見てきた。

一日ごとの必要看護師数を把握するには、下記の式で概ね必要看護師数として把握できる。

入院患者数➗7(7対1の場合、10:1ならば10)✖️3✖️1.7

例えば40人の病棟なら

40➗7✖️3✖️1.7で29.1となり30人となる。

1.7を掛ければ、有休取得などを含めた必要看護師数を割り出すことができる。

この式も市民権を得ていないもので浸透していない。そもそも必要看護師数の認識が、看護部長により異なることも多いので平準化することが必要だ。

奨学金などはすでに内定を出しており紐付きになっているので、採用計画を修正しづらくなる。離職がどれほど出るだろうかと言う読みや患者数の年間の流れ、連動して必要看護師数の年間の流れの把握は非常に重要だ。

これだけでだいぶ経営の行く先が決まってしまうと言っても過言ではないだろう。

これだけ重要な指標が市民権を得ることに苦労している。国は基準以上、時間制限はできない模様。こう言った共通言語があれば経営は良くなるのに、ということは割とある。

その声もなかなか届かない。

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