施設基準の人員管理
診療報酬には加算や指導料を算定するにあたり満たすべき要件があり、最初に要件を満たすことを厚生局へ書類とともに、届け出て初めて算定が可能となる。その後も要件を満たしているかは、定期的な書類の提出と、適時調査と呼ばれる医療機関への実地調査で確認される。
要件の代表的なものとして、各職種の配置や人数が定められているわけだが、医師の診療科や経験年数、研修の受講を満たす方が決められた人数で、専従または専任などで配置されているというものがある。氏名も含めて届出するわけだが、人員の変更が2018年度より不要となり、その間、診療報酬改定も何度も挟んでいる。
さらに新型コロナウイルス感染拡大で設けられた特例措置で一部の施設基準の基準値の緩和が図られたほか、適時調査が感染拡大中は実施されず、従来の方法に戻るまでの過程で自主点検、という時期もあった。
本来、一年に一回回って来るとされる適時調査だが、実際には2〜3年に一回、医療機関の多い東京では5〜6年に一回、それ以上のときもある。
よって、監査も入らないために専従、専任要件やその従事者の管理ができていないということが起きる。
30ほどの病院を日常で施設基準を確認できる環境にいるが、肝心な施設基準の人員管理ができていないケースが非常に多い。
ひとつひとつの施設基準を満たしているか院内で根拠のない論戦をしていることがあるが、現在誰が専従者を果たしているかが余程大事で、大前提だ。
管理の方法としては、いくつかパターンがある。
一つ目はExcelで、人員要件のある施設基準を並べて氏名を記載してあるもの。これは時系列で把握する必要があり、都度、上書きするのでなくシートを分けるなど歴が追えるようにするのが留意点だ。
二つ目は、厚生局への届出用紙を実際には厚生局には出さなくとも最新の状態で作っておくパターンだ。少々面倒くさく、事務負担軽減から始まったのでどうなのかという点もあるが届出用紙の表紙を作っておくものだ。人員管理のほか、数値の要件も確認できるうえ、更新歴も分かるので意外に管理方法としては悪くない。
三つ目は、施設基準管理ソフトの利用だ。最近、人事システムと連携できたり他部署と確認がしやすい施設基準管理ソフトも発売され、導入病院も増えているようだ。しかし、他部署例えば看護部がきちんと定例でシステムを立ち上げ確認をしてくれなければ結局、置物になるリスクもあり、人事システムとの連携も有用となるのは、あくまで人事システムに入力項目漏れのない、きちんと整備がされている場合に初めて有用となる。メンタルや病気、看護の一時的な月またぎの休みなどが反映されていないケースがあり、結局システムと別運用となっていたりするので、そうなると漏れがある時点で全体を捉えた施設基準管理ソフトにならない。
要件を満たす人員の不在は当然施設基準を満たしていることにならず、自主返還を招くことに繋がる。
意外に根幹である管理が難しい。看護部から事務へ人員変更が伝わっていなかった、というパターンも良くあるパターンだ。本来はそのような管理チームや委員会があれば良いのだが、適時調査前に自主点検チェックするシステムも重要だ。
そのため法人本部では適時調査の事前調査チェックをするチームを作って実行している。これにより自主返還は、大きく減少しているが、各病院での人員管理の厳格化は未だに必要な状況だ。