医薬品交渉
近年は診療報酬改定でない年も薬価改定を行う「中間年改定」が毎年行われるようになり、実質どの年が中間年なのかすら、わかりづらい状況だ。
国が医療費を抑えるのも目的だが、卸や医療機関の手続きも煩雑、メーカーもどんどん薬価が下げられて不評だ。
どうせまた来年、薬価を下げられるから、とメーカーも「薬価防衛」の要素を強めて、世の中が「値上げ」のご時世のなか、医薬品の世界でも不採算品目、という名での薬価上昇が国に認められるなど、医療機関が交渉しやすい環境はどんどん窮地に追いやられて行く。
比較的価格の値下げのしやすい、一般薬、後発品のある先発品「長期収載品」が大部分を構成する時代には値引きを争う時代だったが、現在は50万、100万を超える高額医薬品がごろごろとある状況だ。これらの薬はメーカーがすぐに薬価を下げられまいと、応じる姿勢を見せない。
薬価の値付けは9〜10月に卸に対して国が行う、薬価と納入価の乖離状況を調べるいわゆる薬価調査に基づいて値付けがなされる。この平均乖離率が大きいと、薬価は下げられることになる。販売数量にもよるが、、、。
なお、平均乖離率も近年数値は少なくなり、乖離はしなくなっている。先ほど述べた高額医薬品の台頭と、後発品への切替進展、メーカーの薬価防衛と関連があり、医療機関が薬価差で収益を上げるという様相ではなくなっていることを示す。
とはいえ、医療機関も納入価格の交渉を行いたい。グループ購買についてはまた別の機会で触れるが、ベンチマークを利用した交渉も一般的な手段であろうか。
厚生労働省は流通改善ガイドライン、で医薬品一品目ごとの交渉とベンチマークの活用をしないことを求めている。単品単価交渉はメーカーごとの山での交渉を避けることを意味する。ベンチマークについては全国1000ほどの病院が導入するベンチマークシステムを指していると思われる。どう交渉しようと余計なお世話だと思うのだが、ガイドラインで発出されており、メーカーや卸がひとつの武器のように使ってくる。そもそも、医薬品はメーカーと金額の直接交渉ができず、卸のみと行えるという特殊な商取引だ。それを触れずに、医療機関の交渉に規制をかけて、医薬品メーカーの流通は現在も供給不安定の状況が続き、流通改善はなされていない。流通改善ガイドラインとは、どの流通を改善しているのだろうか。
話は逸れたが、医薬品の交渉は過去に比べて極めて難しい時代になってきている。
昔はどれほど交渉できているかを示す指標として、値引率を使っていたが現在では、医薬品構成により大きく変わるので、値引率の指標ふまるで意味がないと考える。
また、ベンチマークも同様に単品単価では確認しなければ意味がない。そして、ベンチマークの金額と比較して自院が高かったからと言って、それを指摘してもおいそれと卸が価格を下げるわけでもない。
卸の新規参入などを行ってももちろん、一定の効果は得られるが、卸間の競争の問題であり、卸の経営も厳しく、配送も難しい地域からはなるべく手をかけたくないという状況において、大きな価格競争は期待できない。
単品単価の交渉のなかで伸びている薬、今後発注が増えるであろう薬はある。そういったものは多少の交渉はできる。
つまりは、採用薬の集約なくして価格を下げることはもはや難しい。
診療材料の値上げが相次ぐなか、むしろコストダウンするには集約の取り組みを実践するしか選択肢がないのと同じだ。
交渉により医薬品納入価格を下げるというよりは、使っている薬の切替を図らねばならない時代になっている。