令和6年度補正予算

物価高騰で苦しむ医療機関へ遂に、補正予算によって「医療施設等経営強化緊急支援事業」の実施要綱が発表された。

病院で1床4万円、診療所や訪問看護ステーションで1施設18万円の生産性向上や職場環境整備に当てられるもの、病床削減を強いられた医療機関に1床あたり4,104千円が交付されるものが2本柱。

東京都でも、東京都独自の入院基本料という話も出ている緊急支援が1人580円で設けられるなど、病院経営にも神風といかないが、春一番くらいが吹きそうな季節だ。

先の補正予算も物価高騰に対して純粋な補填ではなく、生産性向上としているのは財務省との攻防の結果なのだろう。

40歳未満の若手医師や事務などペースアップ評価料の対象でない者にベースアップをしている場合にはこれが使えるが、改定当初においては、持ち出しとなる医療機関が多かったものの基本的には初診料再診料に含まれている説明であった。その意味では、物価高騰に対する補填なのだろうが、診療報酬改定のお題目の1ページめに「物価高騰」と書かれていながら、該当する点数アップはほぼなかったり、どうも国は物価高騰に対する支援を真正面からすることは難しいようである。そのため事実上は経営支援、という意味合いが強いのだと思われる。

1床4万円について、ベースアップに費やし余ったお金はICTの導入や医師事務の採用に使えることになる。ICTは病院の生産性向上には必要だが、やみくもにばらまきをして良いものか。このあたりはさすが自民党だ。

ICTメーカーはここぞとかなり喜ぶだろう。今日も補正予算が使えます、と営業が来た。

医療界には、薬や材料のほかにもシステムやコンサル、大企業からベンチャーまで多くの企業がまつわりすぎるくらいだ。後発品の会社は何社あるのか、、シェアの大きいメーカーが出荷調整になり、共倒れのドミノ倒しは企業活動に介入しなかった闇でもある。なぜ医薬品の不採算品目をメーカーの手挙げで値上げを許すなど、メーカーに優しいのかわからない。またICTはメーカー支援となり、肝心の生産性は格好だけになる可能性もある。

そもそもハコモノが入っても、運用がうまく行かなければ生産性向上に繋がらないが、その点の言及が欠けている。

病床削減の補正予算は今まで1百万円だったものが大幅に増加された。やはりお金で誘導して急性期の病床を減らそうということか。お得意のパターンだが、地域医療構想会議にももっと介入しても良かったのでは。

ともに、2本柱に対して批判が多いのは、補正予算の出す時期である。2月中旬にでて、令和6年度補正予算なので年度内に申請か。あまりに期間が短すぎるとの意見がでている。特に病床削減は地域の場で当然協議が必要になるので、3月末までというのは現実的でない。

期間が伸びる可能性もあるが、現状はかなりタイトな申請期間。まだ都道府県から詳細は出されていない。

確かに生産性向上や効率化は、医療従事者の確保が難しく、医師の働き方改革が進みタスクシフトも行われるなか、必須の課題。

しかし、病床の適正化や、医療従事者や機械の偏在、無駄な診療や投薬の中止、薬剤のOTC化など、こっちの生産性向上や効率化も、まだ山積みだ。高額療養費引き上げの議論も同時に進んでいる。

お金を配るのであれば、こういった抜本的な課題への取り組みを行い、ICTの有効な活用法を示してからではなかったか。

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