交渉に必要なスキル「素直なこと」と先読み
「素直」であることは大事か
仕事柄、企業との交渉にあたることが多いが、あるとき人員不足で交渉要員を補強しようかという話になった。
人選について、交渉のコンサルも行うパートナー先と相談。「まあ素直なら誰でも良いですけどねえ」
それを聞き、確かに、と唸る一方で、後々で考えさせられる反芻する発言でもあった。過去に上司が怒ってもいないのに、牽制も含めて会社名を間違えたプレゼン資料に対して、机を叩かんばかりに剣幕をあげえ捲し立ててたのを横で見ていて、こういうものが交渉かと思ったものだが、裏表ありの強かさが前面に出るものだけが交渉ではない。
交渉とは自社の社内調整と先方の会社の社内調整の場であり、お互いの利益の着地点を見出すことであろう。
調整能力のうち、人から人へ情報を渡し動いてもらうという意味で「素直」であることは必須の条件。理解できたのか、できていないのか、どの点の条件までお互いの利益が一致しどのラインまで譲歩しているのか。持ちつ持たれつ、を実現する意味で「素直」であることはなるほど、必要であろう。
医療機器や業界への知識を蓄え、相手に対抗できる知識は当然必要なのだが、騙されないようにというよりも素直さにより信頼関係が構築されていれば、さして問題はない。そのときどきで必要な知識の状況は異なり、先方の方が知識を多分に持っているケースは多くある。むしろ、先方は第三者的な視点では見れないがその商品に対するプロである。そのときは、信頼関係があれば、教えを乞えばいいだけのことである。
先読みの必要性
しかし、必要なものとして「先読み」の大切さは挙げたい。やはり行き当たりばったりの交渉では、まとまるものもまとまらない。それぞれのシーンで次に起こることをうまく行った場合と行かなかった場合に分け想定することである。それによって対策しようと思えば、その時々で、質問は生まれる。限られた時間のなかで、極めて効率的にものごとを進めることができる。また、予見していなかったことが起きたために社内交渉やその進展が頓挫した暁には、取引先にも顧客にもお互い迷惑となり信頼関係にもヒビが入るだろう。
それが知識なのではと言われれば、知識と重なる部分はあるが、やはり準備をする姿勢があるだけで大きく異なる。自分が次にやるべきことを分かっているということは交渉において極めて重要だと考える。
ある高校野球の有名強豪校の監督も「先読み」の重要性をとくとくと説くと聞いた。スポーツの世界では、データも積極的に取り入れられる今、次に起こることを予測して守備のポジショニングを変えることなどはそれは必要だろう。考えなければ次の行動は生まれないと思う。我が身を振り返って、考えながら野球をする姿勢がなかったことに今となってとても後悔している。
先読みをするには、今の現状把握を正しく認識していることが前提。ただし、またのちにのべるABC分析のとおり、主要なポイントを押さえてあれば詳細までは問わない。
このことは、病院の経営改善を行う側だけでなく、売り買いするお互いの業界で、そしてどの業界でも同じだろう。私は旅行の法人営業もかつて行ったが、他社の提案の違いや価格をヒアリングした上で、熾烈な受注競争のなかどう次に動くか、という部分と今日のテーマは共通するように感じている。
やはり「いとしさと切なさと心強さと」とすれば、「素直さと先読みと粘り強さと。」とする。