一度貼られたレッテルは
医療機関の経営で一度貼られたレッテルは剥がすのが非常に難しい。医療機関側としては、たまたま非常勤医の一度の断りだけで、患者が送られなくなるということがありえる。
・紹介患者を断ったことによる、あの病院は紹介を断る病院だというレッテル。
・紹介を送ったものの、経過報告がない病院。あの病院は送っても逆紹介で返してくれない病院だというレッテル。
・救急隊からの要請への断りで、あの病院はこの疾患は受けられないのだというレッテル。
・外来の待ち時間が長かったことから、あの病院はいつでも混んでいるというレッテル。
代表的なものとして、以上のようなものが思い浮かぶ。中には珍しいものとして、
・あの病院は新病院に近々移転するので、あの病院に患者を送っても諸々影響があるだろうというレッテル
もある。
また、厚労省が2019年9月に「再編統合に特に議論が必要な病院」として424病院をリストアップして話題になったが、観測する病院では若干のタイムラグを経てノミネートされた病院の紹介患者数の減少が見られた。これは、おそらくそう言ったレッテルによるものかもしれないと考えている。
ありとあらゆるところにレッテルは潜む。
・あの病院は価格交渉に煩くなく、管理が杜撰だから大丈夫だ。
という代理店やメーカーからのレッテルも一度貼られると、価格に大きな影響を及ぼす。
レッテルを剥がすと言うことは大変なこと。
まずはレッテルが剥がれるきっかけが必要とのこと。新しい環境や、大きな成功、第三者からの進言が必要。外的なトリガーによってレッテルを疑う機会が必要となる。
レッテルは記号でなく記憶だから。
また、信用の回復には、時間をかけて一貫性のある対応をとり、過去とのギャップを見せ続けることが必要になるという。数ヶ月から数年の時間を要することもあり、その間に病院の経営はどんどん悪くなってしまう。
さらに、院長や管理者ひとりでなく組織的に一貫した対応をしなければならないのでハードルは高い。
地域連携において、悪い情報を知らないこと、自院がどのように見られているかわからないことは大きな課題だ。このようなレッテルを貼られていることに気づくこともないし、レッテルを剥がす機会すらない。
その意味では、やはり近隣の病院とは密に連携を取っておくことが必要になる。地域連携だけでなく、外来混み時間のモニターもそう。メーカーや代理店とも密に連絡が取れていれば、舐められることも防止できる。
なかなかそううまくも行かないのだが、一度貼られたレッテルを剥がすのはとても大変、経営の難しさであろう。