スケールメリットとガバナンス

医療機関の経営において昔は材料費率は病院で20%程度だったものが高額薬剤の台頭や、物価高騰などの影響で今では20%の後半という病院も多いだろう。病院での材料交渉の重要性は過去より増している。

医療界は自動車業界と同様の規模を持つ産業とされており、多くの企業が支えている。裏を返すと、それだけの企業が医療界において利益をあげていることになる。今の診療報酬において、価格交渉をせずに病院が事業継続のための黒字を出し続けることは難しい。まして、メーカーと病院の間には代理店という立場の企業も存在する。利益構造としては二重構造にもなる。

長年、こういった費用削減の交渉などを経験してみてつくづく思うのは、単独の病院で価格交渉を行うことは、極めて難しいということだ。いくつかの病院を束ねてスケールメリットを活用しなければ、メーカーへの交渉も難しいし、院内への利用を働きかける動機も自院の採用のみでは弱い。強制力がない。まして、単独の病院では当然、全ての材料を交渉しなければならないのに対し、共同購買組織などがあればある品目はグループの交渉に任せることができる。業務量が段違いに異なってくる。

そして、単独の病院では例えばベンチマークソフトといった武器の購入も採算性などで導入するにも簡単でないだろうし、なんといっても入ってくる情報の量も限られて、交渉スキルを培うのも難しいだろう。ひとたび担当者が変われば、そのノウハウはきちんと引き継がれるだろうか。非常にリスキーだ。

病院での業務は本当に幅広い。200床クラスの病院では事務職員もたくさんいて、ある程度交渉要員を定めることができるかもしれないが、その単独交渉を行う病院が中小規模であればあるほど、事務職員は兼務になりがちなので用度の担当だけを行うことは不可能になる。

考えるだけで、単独病院での削減交渉は大変だ。今はグループ病院のほかにも、医療法人のグループや、地域医療連携推進法人の共同購買などさまざまな形態がある。診療材料などでは、いくつかの民間の共同購買組織があり、国立大学病院や国立病院機構などの病院も参画している。

同規模の同じような薬や同じような材料を取り扱う病院が集まれば、バイイングパワーは大きくなり、当然メーカーとしては価格に跳ね返らせて、安価な金額設定を行える。

共同購買組織も加入病院数をセールストークに使うが、必ずしもそれだけでは充分でないと感じている。バイイングパワーが大きくても、ガバナンスが強くなければ、初回の見積もりが安価なだけで、継続して安価な金額設定をすることができない。

メーカーとして欲しいのは大きなバイイングパワーと強いガバナンスだ。

組織が大きくなれば大きくなるほど、通常は統制が聞きづらくなる。材料であれば、切替を行わず、安くなった金額のメリットだけ享受するフリーライダーが増えてくるのだ。共同購買組織もグループ病院も、やはり有効な購入をするためには既存の物品からの切替は欠かせない。推奨品へチェンジ、するという行為が当然メーカー間の競争を産み出す。切り替わらないのであれば、メーカーはわざわざ安価にする必要がない。本当に切り替えるつもりがあるよ、という姿勢がメーカー内の、社内稟議を通すためにも非常に重要だ。

つまりは病院数が多いスケールメリットだけでもダメだし、ガバナンスが効く病院も単独や数病院ではメーカーにとって、魅力的でない。このスケールメリットとガバナンスのバランスが重要なのだ。まだ気づいていない民間事業者も多い。

費用削減は、いかにアクションをするかだ。共同購買組織に入っても、アクションがなければ恩恵は少ない。多くの病院がアクションを行う組織に加盟することが、成功への道筋だろう。

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